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雨天


 雨の中を走る
 びっしょりと濡れたスカートが足に張り付いている
 長い髪からしずくがぽたぽたと滴る
 私は走るのを諦める

 雨の中を走る
 自転車を横目で見送って
 眼鏡をはずそうかはずさまいか考えている
 キケンだからそのままにしておく

 雨の中を走る
 少女たちが駆けてゆく
 足元でぴちゃぴちゃと水滴を跳ね上げながら
 黄色と桃色のオーラを揺らめかせながら

 雨の中を走る
 私はもう走っていない
 パーカーを目深にかぶった男性が
 リズミカルに坂を駆けあがってゆく

 雨の中を走る
 自動車は不思議な音を立てる
 私にはよくわからない
 あなたたちは雨から身を守られいる、しかし新たな危険を自ら運転している

 雨の中に居る
 舗装された道路はぬかるんでなどいない
 穴の開いたスニーカーに
 容赦なく水がしみ込んでくるだけ

 雨の中を走る
 私もかつて走っていた
 そこはどこだったかしら、運動場? それとも学校の廊下?
 どちらにせよ、そこに雨は降っていなかったように思う

 雨の中に居る
 私はもはや歩いてすらいない
 ただ雨の中に突っ立って
 空を仰いで、何かを待っている


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