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天を仰ぐ


 青い空から沈黙が降ってくる
 まるで通り雨のように過ぎ去ってゆく
 静けさを破る歌声が渡る
 均衡を失った体は傾く
 風がわずかな揺らぎを起こす
 耐えきれなくなり倒れる
 ほんの些細な歪みであったはずなのに
 もうそこには取り返しのない汚濁が染み込み、滲んでいる

 あなたならこの清らかさを
 すがすがしいままに保てますか、と
 年若い青年は問う
 椅子に腰かけた老婆が応う
 その言葉を青年は掴めない
 あなたは望みのモノを手にいれましたか
 それは一体何だったのですか
 老婆は穏やかに微笑み、
 緩やかに呼吸と体温を失っていった

 灰色の雲にさえぎられて、おぼろげな光が降ってくる
 かたく引き締まった幹の向こうで、雨水が吸い上げられてる
 産声が静寂を破壊して、歓喜と絶望を歌い上げる
 世界は無関心に生命を祝福する
 無感動に誕生は祝われる、呪われたものとして、厭わしきものとして
 今
 後戻りのできない汚染が始まり、刻みつけられた
 滲み、拡散し、霧散するまでの永く短い道のりが
 完全な惨めさを纏わないことを、祈る




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