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三月の空


 地に伏し倒れた君を見る
 君は血を流し空を仰ぐ
 僕は君の手を握る
 君を切り裂いたこの腕で

 世界はずいぶん透明で
 地面も白く光って見える
 空も青いんだか明るいんだか
 赤いのだか暗いのやら

 君の眼が偏って僕を見つける
 開いた口が何かを伝えたそうだけど
 僕に聞こえるのは君のか細い息遣いだけ
 君が息絶えるその前に
 僕は君に伝えたいことがある
 ごめんなさい
 ありがとう

 君は笑うでも泣くでもなく
 それでも何か納得したような表情で
 僕から目をそらしもう一度空を見る
 青空なのか、夜空なのか
 君の眼に映る空を
 僕はもう二度と知ることはない

 傍らに倒れた剣
 君を斬って裂いた刃を
 僕はもう一度見つめ直す
 それは光に包まれて、今にも消えてしまいそう
 君と一緒に
 過去の彼方に去るのだろう
 或いは未来で再びまみえるのだろうか
 僕を待つ者について僕は考えを巡らし
 あまり意味はないと悟ってやめる
 そうする間にも君は消え去る
 流れる血は光の砂になって、僕の手を洗う
 花が咲いたようにも見えたけど、それもきっと幻覚
 まるで何事もなかったかのように
 僕は一人きり

 空を仰いで空を探すけど
 青いのだか明るいのだか
 わからなくなってそっと目を閉じる



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