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かーごめ かぁごめ かぁごのなぁかの とーりぃはー
背後に尾行られている気配がする、というのは事実であるが正確ではない。
西の空が真っ赤に染まる夕暮れ時である。光を遮る雲の量も少なく、かなり広い範囲が朱色になっている。黄昏時、というのだろうか。長い長い影をひきながら、ノリヒトは住宅地の道を歩いていた。
ぱたぱたと走る音、きゃっきゃとはしゃぐ声、複数の子供が遊んでいる気配。
ノリヒトは歩く。
ちりんちりんと自転車のベルの音、「××ちゃーん」「あははっ」子供のおしゃべり、電線に止まっていた鴉の羽ばたき。
ノリヒトは歩く。
鴉が一声鳴く、かーごめ かぁごめ と歌声、甲高く響く子供の声、遠ざかることのない、子供の気配。
ノリヒトは立ち止った。
「私に何か用かい?」
声は凛と響いた。歌がやみ、代わりに笑い声が背後で震えた。
「残念だけど、あまり力にはなれないよ」
振り返らず、独り言のように話す。
「うそつき」
電柱の陰から言葉が投げかけられる。
それを最後に子供の気配は遠のいた。
「また余計なもん連れて歩いてきたな」
ノリヒトが扉を開けるなり、ゴウレイは言った。玄関で仁王立ちになり、待ち構えていたかのようだった。
「今日は見逃してくれたみたいだよ」
ゴウレイは顔をしかめ、何も言わずに廊下を去っていった。エプロンをしていたことと家中に良い香りが漂ってることから、台所へ戻ったのだろう。
ノリヒトは階段を上がり、自分の部屋に行った。鞄やらコートやらをおろす。
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