忍者ブログ

[PR]

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

小雨と待つ


 さあっと雨が降り出した。野外にいた男は濡れるのにかまわず歩を進めた。
 すぐにやむ通り雨だと判断したのだが、男の意に反して雨は緩急なくふり続けた。雨脚は弱い。
 男はやがて木の幹にもたれる女を見つけた。木陰の下とはいえ、彼女も雨にさらされ濡れている。
 湿り気を帯びた黒髪の下で、険しい眼が男をとらえた。顎を上げ、男と対面する。
「待ったか」
「待たない」
 簡潔なやりとり。男は女に背を向けて、もと来た道を返した。女は何も言わずそのあとをついていった。
 
 濡れた枯葉を踏む。辺りの木は落葉を迎え、寒々しい枝を晒している。男と女は林のなかを、心持早足で分け入ってゆく。
 女が小さくくしゃみをした。
「寒いか」
 男は前を向いたまま淡々ときいた。
「寒ィ」
 女は答え、それきり黙った。二人は静かに歩を進めた。
 やがて粗末な小屋にたどりつく。
 

拍手

PR

Comment

お名前
タイトル
E-MAIL
URL
コメント
パスワード

Copyright © 震度六症候群 : All rights reserved

「震度六症候群」に掲載されている文章・画像・その他すべての無断転載・無断掲載を禁止します。

TemplateDesign by KARMA7
忍者ブログ [PR]